「オノマトペにおけるコロケーションに関する研究
ー日本人母語話者と日本語学習者とのパリエーションの比較ー」(仮)
研究動機
・日本語母語話者は日常会話の中にオノマトペが頻繁に使われている。
・しかし、学習者があまり習得されていないし、どういうふうに使うのかも明確されていない。
・そこで、本研究では、日本人母語話者と日本語学習者がそれぞれの認知プロセスを明らかにし、その違いを分析したいと考えている。
オノマトペに関する先行研究
オノマトペの比喩性は二段階にわけて考えることができる。
①通常、音象徴と言われる段階(丹野1990;ヤン2007;竹本2007)
②またオノマトペの用例自体が比喩的な用法という段階とがある。(呂2006)
一方、オノマトペの習得については三上(2004)では多義オノマトペ「ごろごろ」「ばたばた」を例に、「文脈化」という概念をもって、オノマトペ指導、広くは語彙教育全般に対する一つの方向性を提示した。
コロケーションに関する先行研究
日本語教育においても、大曾・滝沢(2003)が日本語学習者の作文に見られる、共起関係の誤りによる不自然な表現を挙げ、連語の知識の必要性を述べていた。
三好(2007)では、自由結合をコロケーションとして扱い、単語の意味による指導との比較により、コロケーションによる語彙指導の有効性を検証する実験を行った。
研究目的と動機
オノマトペにおける日本語学に関する研究が多く見られる。しかし、語彙習得においた先行研究があまりにも少ない。 そこで、本研究では日本人母語話者と学習者それぞれのバリエーションを明らかにしたいと考えている。
その結果を分析した上で、オノマトペ習得においては、意味を教えるだけではなく、そのコロケーションと一緒に教えたら効果的ではないかと示唆し、今後の課題では効果的かどうかについて実験を行いたいと考えている。
研究課題
課題①:オノマトペにおける日本語母語話者はどういうふうに共起されているのか。
課題②:オノマトペにおける日本語学習者はどういうふうに共起されているのか。
課題③:日本語学習者は共起関係の不自然な表現をした場合、それは日本語能力、滞日歴、母語における影響を及ぼしているのか。
課題④:日本語母語話者と日本語学習者それぞれ持っているバリエーションはどう違っているのか。
研究方法
予備調査(共起してもらうオノマトペについて選定すること。)
対象者:日本人(30名)、日本語学習者(30名)日本語能 力、滞日歴、母語に考慮にいれるように考えている。
想起実験を行う。例:「ぴかぴか」というオノマトペについて、例文 を作る。
どういう語が共起されるのかをテストで行う。例:鍋を( )磨く。
予想結果
①日本人母語話者についてコロケーションする語が大体決まっていてその傾向が見えてくる。
②日本語学習者についてあまり傾向がみえてこない。つまり、どういう状況の中でどういうオノマトペをつかっていいのかについてあまり分からない。
③母語においてあまり影響が及ぼさない。また、滞日歴、日本語能力によって共起の傾向が見えてくる。
④それぞれのバリエーションについて分析し、お互いに密接している傾向について学習者が分かればオノマトペの習得に役に立つと示唆する。
進捗状況
オノマトペ習得に関する先行研究を整理している。
コロケーションに関する先行研究を調べている。
実験に対象とするオノマトペについてコーパスを通して、選定している。
主な参考文献
玉村文郎(1989)「日本語の音象徴語の特徴とその教育」『日本語教育』68、日本語教育学会
丹野真智俊(1990)「オノマトペにおける連想」『佐賀大学教育学部研究論文集』第37集
坂本正・小山悟(1997)「日本語学習者の文法修正能力」『第二言語としての日本語の習得研究』一号pp・9-28
水口理香(2003)「類義語の使い分けについて研究」
三上京子(2003)「上級教材に見られるオノマトペー統語的特徴の分析と指導の観点ー」『早稲田大学日本語教育研究』第2号
大曾美恵子・滝沢直宏(2003)「コーパスによる日本語教育の研究ーコロケーション及びその誤用を中心にー」『日本語学』22-5、明治書院
三上京子(2004)「多義オノマトペの意味・用法の記述と指導の試みーごろごろ・ばたばた 例として」『小出記念日本語教育研究会論文集』12、小出記念日本語教育研究会
鷲見幸美(2005)「移動を表す類義表現」『日本認知言語学会論文集』5、日本認知言語学会
李澤熊(2005)「非意図的であることを表す副詞の意味分析」『日本認知言語学会論文集』5、日本認知言語学会
呂 佳容(2006)「比喩としてのオノマトペー「ころころ」と「圆滚滚」-『日本認知言語学会論文集』6、日本認知言語学会
有賀千佳子(2007)「オノマトペを通して、語彙の学習・教育について考える」『日本語学』26(7)明治書院
秋元美晴(2007)「日本語教育におけるオノマトペの位置づけ」『日本語学』26(7)明治書院
ヤン・ジュンヨン(2007)「擬情オノマトペの表す意味とその音的特徴について」『日本認知言語学会論文集』7、日本認知言語学会
竹本江梨(2007)「擬態語における長母音と反復形の音象徴と類像性:「かっ」「かあっ」「かっか」『日本認知言語学会論文集』7、日本認知言語学会
三好裕子(2007)「連語による語彙指導の有効性の検討」『日本語教育』134号